2018年4月
今月は高校の入学式でお話した内容をお伝えします。
当日は緊張している新入生を前にして、なるべく堅苦しくならないように「話し言葉」で語らせていただきました。そのため以下に記述した文章は実際に話したものとは異なります。
また後から思うと言葉足らずだったり、伝わりにくかったと思うところは加筆、修正しています。
「お話したこと」というよりは「お伝えしたかったこと」に近いかと思います。

式辞

新入生のみなさんご入学おめでとうございます。
みなさんを生野学園の仲間としてお迎えすることができてたいへんうれしく思っています。
また保護者の皆様は「ある意味お子さんたちとともに生野学園に入学された」と思っていますので、これから3年間よろしくお願いいたします。

今日は2つのことをお話しようと思います。
まず1つ目です。
皆さんはこれから3年間生野学園で過ごすわけですが、その中でいろいろと変化、成長されていくと思います。
ではその変化や成長はいったいどのようにしてもたらされるのでしょうか?
それはたぶん「人と関わること」ではないかと思います。
人には持って生まれた資質がありますが、他者と関わらず、ずっと一人でいたのではたぶんそれが開花していくことはないと思います。人は他者といろいろと関係することで、はじめて成長していくのことが出来るのではないでしょうか?

自分のような歳になるともうあまり変化することもないので、ある程度固まった人格をもとにした関係しか出来ませんが、みなさんのような年齢であれば、他者とどのような関係を築くかによって皆さん自身の変化、成長の仕方が変わってくると思います。
ですから、これから皆さんがご家族の方、仲間たち、そしてスタッフとどういう関係を作っていくかがとても大切になります。

もし表面的なところで適当に周りに合わせるような関係にとどまるのなら、たぶんみなさんの成長にとってプラスになることはないでしょう。
でも生野学園の最大の特徴は全寮制で生活を共にすることであり、その中では「表面的な関係」にとどまることは出来ないと思います。24時間一緒に生活していれば人のいろんな面が見えてくるし、楽しいことだけでなく、しんどいこともたくさん在ると思います。それでも続いていく生活の中で深い関係が出来ていくのではないかと思います。
そんな関係の中でたくましく成長していかれることを願っています。

つぎに、皆さんはこれから寮生活という貴重な「体験」をされていくわけですが、その「体験」について「知識」との違いという視点からお話ししてみようと思います。これが2つ目の話です。
「体験」と「知識」の違いとはなんでしょう?
それは、それぞれが起こる「時間」にあると思います。
まず「知識」とは過去に起きたことを言葉や映像などに記録したものを知ることです。
これに対し「体験」は今ここ、リアルタイムで五官を通じて感じるという経験です。

「体験」と「知識」のどちらが重要ということはありません。それぞれの長短があります。
「知識」により一人の人間では決して経験できない昔のことや遠い場所で起こったことなどを、間接的にではありますが、経験することが出来ます。
ただ記録することで、その場にあった細かい情報は抜け落ちてしまっています。

これに対し「体験」では幅広い経験はできませんが、「知識」よりもはるかに多い情報がリアルタイムで入ってきます。
たとえば人と話をする時でも、その人の表情、声の調子、周りにいる人、周りの環境・・など文章に記録したら抜け落ちてしまうたくさんの情報が含まれているのです。
それらをリアルタイムで処理していかなければならないので、たぶん脳はフル回転していると思います。
皆さんは昨日から寮での生活をはじめていますが、新しい人と出会い、話したりして、すでにたくさんの「体験」をし、膨大な情報にさらされていると思います。
それを処理し受け止めて生活していくのですから、寮生活では「その場にいる」というだけで実は充分にすごいことをしているのです。
その積み重ねの中で皆さんの間に深い関係が築かれていくのだと思います。

そんなわけですから週末に帰宅する頃には疲れてへとへとになっているかもしれません。
週末には家でゆっくり休んで、「体験」したことをゆっくり振り返り、熟成させてください。

そして保護者の皆さん。お子さんが週末疲れた様子で帰ってきて、ずっと寝ていたとしても「寮にいるだけでも本当にすごいことなんだ」ということを理解して、ゆっくり休ませたあげてほしいと思います。
また、「体験」だけで精一杯で学習にまで手が回らず「知識」が増えていないようでも、あまり心配されずゆったりと見守ってあげてください。

最後になりますが、一人ひとりのペースは違っていて当たり前です。
ですから始めにお話した「関係」についても、どんどん広げていったらよい子もいるし、今は家族や少ない人数の人との関係をしっかりと築いたらよい子もいます。
それぞれのペースであせらずに成長していってほしいと思います。

以上、短いお話ですが式辞とさせていただきます。