「居場所」から「ふるさと」へ
前田知見
高星会ニュースより
 ある卒業生に「それは“里腹”って言うんやで」と話をしたことがあります。学園に訪れてきたとき、ひさしぶリの空間、なっかしいスタッフや見慣れない在校生に、始めのうちはぎこちない様子でしたが、昼食を一緒に食堂でお世話になったとき「やつぱり学園は変わってないな」「初めてお代わリしたいと思った」と言っていたのです。食堂の食事が学園をふるさととして認識するひとつになっていたのだと思います。在校生でも、スキー旅行や修学旅行、長期の休みを明けての食堂での食事を「やっと帰ってきた感じ」と言う子もいるのです。食事というものは、ただ生命をつなぐ手段としてだけでなく、誰が用意し、何を、どこで、誰と食べたのか、そういったことが居場所を築くひとつになるということを体と心で自然に感じているのかも知れません。
 さて今年度の高校入学式、スタッフ紹介の場面で私は「女子寮の一人ひとりが主人公になれる、そんな寮をつくっていきたいと思っています」と伝えました。学園生活を、物語の主人公のように自分自身でつくっていけるように、そんな願いを込めて。そのためには主役になれる何かを引き出してあげられないかと、好きなものや苦手なこと、家族との関係、家の間取り、家での過ごし方など、生徒一人ひとりの背景を知りたいと思うようになリました。新入生だけでなく在校生にも、そして一度でなく何度もくり返して聞いています。しかし、この一年をふり返ると生徒一人ひとりが学園に来る意味、寮という空間をどう使うか、一緒に考えたり話を聞くことが大切だったと思いますが、充分な時間がつくれず、寮生活を大切にしてあげられたのだろうか、生徒たちが主体となって寮をつくるお手伝いができたのだろうか、と反省しています。そんな中でも寮の中にはお姉さんや妹、ムードメーカー、気持ちを上手に伝えられたり聞き役になれる子、絵や手芸が上手な子、こまやかな子、など自分のできることを考え、行動する中で役割のある生徒ばかりです。スタッフ以上に生徒たちのほうがお互いのことを分かって、認め合っているんだと気づかされました。
 一人ひとりのいいところ、苦手なところ、それぞれが受け入れ合って営む生活は、やがてお互いにとっての居場所になる、そう信じています。
27期生の巣立つ22人にとっては、27期というホームルームがひとつの居場所になっていると思います。それぞれが三年間という時間をかけて知り合って、ひとつのチームになリました。それは生徒だけでなく、親御さんにも言えることで、3年前、入学式後のオリエンテーションで「みなさんはチームになられます」と伝えたことば通リに、そして仲間にしてくださいと言ったお願いも聞き届けてくださいました。
 子どもたちにとって、そして親御さんにとって、学園が“居場所”になれていたら嬉しく思います。
 この先、彼ら彼女らが里腹を感じることのできる“ふるさと”に恵まれますように。そんなことを願っています。
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