2019年4月
遅くなりましたが、4月9日の高校入学式でお話しした内容をまとめました。
いつものことですが、式ではなるべく話し言葉で語りかけることを大切にしたいので、原稿を用意して読み上げることはしていません。ただぶっつけ本番で話をするような力量はないので事前に話す内容を整理したメモ書きは作っています。以下の文はそのメモ書きをもとに再構成したものです。
当日の話では言い間違えや言い忘れ、あるいはその場の思いつきで付け加えた事もあったと思うので、細部では実際の話とは異なる点もありますが、お伝えしたかった内容に大きな差はありません。

24名の新入生の皆さんご入学おめでとうございます。
そしてご家族の皆さんおめでとうございます。
今日は皆さんに二つの事をお話ししようと思います。
一つ目は生野学園を皆さんにとって安心できる居場所にしてほしいという事です。
たぶんみなさんはここに来るまで、学校という場所に居づらさや生きにくさを感じてこられたのではないでしょうか。そして生野学園に見学に来たり体験入学をする中で「ここだったら自分の居場所を見つけられるかもしれない」、そんな思いを抱いて、今ここにおられるのではないかと思います。ですから皆さんにはぜひ生野学園を安心できる居場所にしてほしいと思います。
ただこの安心できる居場所というものはあらかじめ用意され、出来上がっているものではありません。実はこれからみなさんが自分たちで作り上げていくものなのです。
どういうことかというと、そもそも安心感というものは人との関係の中でもたらされるものです。お互いのことを知り、お互いを認め合う中で「自分はここにいてもいいんだ」ということを実感することが安心感につながるのです。ですから安心できる居場所を作るためにはお互いのことを知り、認め合い安心感を育てていく必要があるんです。
でも今日入学式を迎えられたみなさんはまだまだお互いのことを知りません。2年、3年生の先輩やスタッフのこともほとんど知らないと思います。
ですからみなさんがこれからここで共に生活し、いろんなことをする中でお互いを知り認め合っていくこと、この場所を皆さんにとって安心できる居場所にしていかなければならないのです。
しかしこれは簡単なことではありません。2年生や3年生の人はよくわかると思いますが、はじめのうちは周りが見えなかったり、お互いぶつかって感情的になったり、落ち込んだり、あるいは周りの子に話しかける勇気が持てなかったりと、けっこう大変な過程なのです。でもこの過程を経て少しづづ話をしたり、一緒に何かができるようになってどこかで気持ちが通じ合い、お互いを認め合うことができるようになり、徐々にこの場所が安心できる居場所になっていくのです。
けっして焦る必要はないのでじっくり時間をかけて、躓いても諦めずに生野学園を皆さんにとって安心できる居場所にしていってほしいと思います。

二つ目の話に移ります。
二つ目の話は皆さんにはぜひ自分のやりたいことをやってみてほしいということです。
生野学園という所は本当に自由な場所です。この自由は皆さんに「ああしなさい」とか「こうしなさい」と言って、何か決められたことをさせるのではなく、みなさんが本当にしてみたいことを見つけたら、なるべくそれに制限を加えることなく実現してもらうためのものです。
もちろん何でもかんでもできるというわけではありません。みんなが共同生活をしていく上で必要ルールは当然あるし、みなさんの安全のためにはやりたいことに制約をかけないといけない場合もあります。
でもできる限り要らない制約は取っ払ってみなさんのやりたいことを実現できるようにしたいと思っています。ですから遊ぶことでも、体を動かすことでも、何かを作ったり、楽器を弾くことでも、あるいは学習に励むことでも、どんな些細なことであっても自分がやってみたいということをしてほしいと思います。
人間は自分のやってみたいという気持ちにそって主体的に動いている時は本当に楽しそうでいい表情をし見せるし、たぶん「自分自身を生きている」という実感を得られるのだと思います。 ただ、これも焦る必要はありません。今日入学した皆さんがすぐにやりたいことをどんどんやっていくのは難しいと思います。
それをするにはエネルギーが必要で、ゆっくり休んでエネルギーを蓄積する時間が必要になることもあると思います。あるいはなかなかやりたいことが見つからないで退屈な時間を過ごす事もあるかもしれません。一見無駄な時間を過ごしているように見えるかもしれませんが、心の奥底では準備が進んでいて、ある段階まで来るとやりたいことが湧き出てくるのではないかと思います。
ですから、仮に生野学園での3年間がそうした準備だけになったとしても、それは意味のあることだと思います。それぐらいの長いタイムスパンでいいんで、ぜひみなさんのやってみたいことを実現していってください。

生野学園を皆さんにとって本当に安心できる居場所にしていくこと、そして、そこで皆さんが本当にやってみたいことしていくこと、この二つを焦らずにゆっくりと実現されることを皆さんにお願いして式辞とさせていただきます。