2020年1月
先日ちょっとした怪我をしてしまい投稿が遅れてしまいました。お詫び申し上げます。
もっと余裕を持って書かないとダメですね。
(怪我は順調に回復しているのでご心配なく)

前回の雑感で人間の認識の発達においては「対話」が重要であり、教育の場面でも「一方通行の一斉授業」や「暗記的なトレーニング」に替わる「対話的な授業」が取り入れられるべきだということをお話しました。
そして近年の社会の変化に伴いこうした認識は多くの人の共有するところとなってきたようで、新学習指導要領にも「主体的、対話的で深い学び」が提唱されています。
この事自体はとても良いことなのですが、では実際にどうすれば「主体的、対話的で深い学び」が実現できるのかとなると、まだまだわからないことが多く教育現場での混乱も予想されます。

ただ一方で主体的・対話的な学びを実践している数々の試みが存在しているのも事実です。こうした教育はオルタナティブ教育と呼ばれており、モンテッソーリ、シュタイナー、ダルトン、フレイネなどの教育が有名です。日本でも「学び合い」という考えが提唱され実践されています。重要なのはこうした取り組みから真摯に学ぶことではないでしょうか。
そんな中で自分が注目している取り組みにイエナプラン教育があります。

イエナプラン教育はドイツのイエナ大学のペーター・ペーターセンによって20世紀前半に提唱され、20世紀後半にオランダを中心に発展してきた教育で、オランダではイエナプラン教育の小学校が220校ほどあるそうです。日本でもこの4月にはじめてのイエナプランの小学校が開校されることで話題になっています。
今回はこのイエナプラン教育についてお話しようと思うのですが、自分自身が実際にイエナプラン教育の現場を見たわけでなく、その知識は教育研究家リヒテルズ直子さんの著書・訳書から得たものであることをはじめにお断りしておきます。そして話の内容もあくまで自分の興味関心に そって自分なりに解釈したものですので、イエナプランの全体像をお知りになりたい方はリヒテルズさんの本を読まれることをおすすめしておきます。

イエナプランは簡単に言うと「一人ひとりを大切にしながら自立と共生を学ぶオープンモデルの教育」ということになります。「オープンモデル」というのはなにか作り込まれた教育法、画一的なメソッドのようなものではなく学校を作っていく上での基本的な考え方、原則を提示するものだということのようです。
この原則をオランダのイエナプラン教育協会では20項目にまとめています。
その1〜5は「人」について、6〜10は「社会」について11〜20は「学校」についての原則となっています。原則の内容は内容は日本イエナプラン教育協会のサイトで読むことができるのでご確認下さい。
イエナプランではこうした原則を踏まえ実際に学校を作っていくわけですが、社会的文化的背景が異なれば実現方法は異なることもありうるので、例えばオランダと日本では違った部分が出てくることもあり得るようです。

20の原則は一つ一つ深く考えて練り上げられているので付け加えることは何もないのですが、以下、学校に関するいくつかの項目について自分の考え、感じたことを述べてみます。

まず初めは原則の11番です。
「学びの場(学校)とは、そこにかかわっている人たちすべてにとって、独立した、しかも共同して作る組織です。学びの場(学校)は、社会からの影響も受けますが、それと同時に、社会に対しても影響を与えるものです。」
これは「自分たちのことは自分たちで決める」という民主主義社会での学校はこうあるべきだということを示していると思います。学校を共に作っていく中で、一人ひとりが社会の中でその主体として生きていくことを学んでいくのではないでしょうか。
具体的には例えば教室をリビングルームと呼び、子どもたち一人ひとりの学びのスタイルが生かされるように、グループリーダーといわれる担任と子どもたちが話し合って机や教具などの配置や内装を決めていくそうです。こうした身近なところから自分たちで決めていく経験が民主主義を根付かせていくのではと思います。

二つ目は原則の16番です。
「学びの場(学校)では、子どもたちがお互いに学びあったり助け合ったりすることができるように、年齢や発達の程度の違いのある子どもたちを慎重に検討して組み合わせたグループを作ります。」
オランダのイエナプラン校では4-6歳、7-9歳、10-12歳という3学年ごとの異年齢グループを作り、同じグループリーダーのもとで3年間を過ごすそうです。
先月の雑感でお話ししたように、子どもたちの認識の発達は言語により自らの生きる世界が分節されていく過程であり、それはすでに分かっている他者同志の会話を聞いたり、他者と対話する中で自ら発見し気づいていくものです。異年齢の集団ではそうした対話が自然と生まれるので子どもたちの認識の発達にはとても有効だと思います。
また以前お話ししたように子どもたちは「自分もあんなふうになりたいな」と思う具体的なモデル(同一視の対象)を真似ることで成長していきます。その意味でも異年齢の集団であればモデルが身近に存在するのでとても有意義だと思います。

三つ目は原則の18番です。
「学びの場(学校)では、学習の基本である、経験すること、発見すること、探究することなどとともに、ワールドオリエンテーションという活動が中心的な位置を占めます。」
ワールドオリエンテーションというのは理科、社会の区別なく行う日本で言えば「総合学習」のようなものですが、日本の総合学習が通常の学習に付け足された中途半端なものであるのに対しイエナプランでは学習の中心に位置付けられています。
それは様々なテーマのもとで実際に世界で起きている物事に触れ、観察したり体験する中で、自らに問いかけたり人に尋ねたり、文献やネットで調べたり、グループの子と考えや意見をやり取りしながら行う主体的で共同的な探究であり、国語や算数などの基礎的な学習も含め全ての学びがワールドオリエンテーションを中心として進められていくそうです。
子どもたちはこの中で、単に答えを学ぶのではなく、自ら問いを発見しそれを探究していくこと、言い換えれば学び方そのものを学んでいくことが目指されているのです。

以上3つの原則についてお話ししましたが、これはイエナプランの一面に過ぎません。
「人とは」「社会とは」と言ったより根本的な原則についても考えてみたいところですが、まだ少し荷が重いので、もう少し考えた上で別の機会にお話しさせていただきたいと思います。