生野学園の行事について
-- 自分たちで作り上げる楽しさと難しさ --
2学期には毎年、体育祭や学園祭といった大きな行事が行われます。
そんなこともあって、今月は生野学園の行事についてお話してみようと思います。

生野学園では基本的にいつどんな行事をするかをあらかじめ決めてはいません。
行事は子どもたちが「やりたい」と言ってから初めて計画されるのです。
具体的にはやりたいと思った子が「全員集会」でみんなに呼びかけ、賛同されて初めてスタートします。その後、希望者からなる「実行委員会」が組織され行事の準備が進められていくのです。これは「行事はスタッフがさせるものではなく、子どもたちが自分たちで主体的にするものだ」という考えに基づいています。

子どもたちが行事を作っていく上で重要なことは基本的に「自分たちの思い通りの行事を企画できること」だと思います。もちろん学校という組織の中ですることであり、外との関わりもあるのですべてが「思い通り」に出来るわけではありません。地元の方たちとの関係とか宿泊施設の関係もあって「もしするのならこの日に」という日程をあらかじめ決めている行事もあります。また行事を企画する上で、一からすべてを作っていくのは大変なので以前に行った行事の内容を踏襲しなければならないこともあります。
それでも基本的なところでは子どもたちに任せて「自分たちで考えて企画したことが実行できる」ということが保証されていることが重要だと思います。
子どもたちがいろんなアイデアを出し合って「こんなことをしてみたら?」とか「こんなふうにしたら面白いんじゃない?」とか「こうした方がいいんじゃない?」とか、あれこれ話しあいながらイメージを膨らませて「思い通りの行事」を作っていくことが行事を企画することの醍醐味なのです。
ですから、たとえ些細なことであっても「自分たちで決めることが出来る」という事を大切にしたいと思います。
逆に、あらかじめ自分たちのあずかり知らぬ所で内容が決められていて、ただそれを手伝うという関わり方をしたのでは「役に立った」という満足感は得られても、「自分たちで作り上げた」という「達成感」は得られないのではないでしょうか?
「役に立った」という満足感はそれはそれでとても貴重なことではあるのですが、出来れば「思い通りに作り上げていく楽しさ」を経験してほしいと思います。
ただ、これまで「決められたこと」をお手伝いするという関わり方をしてきた子どもたちは「自分たちで決めていいよ」と言われてもどうしていいのかわからないこともあります。
そのためスタッフとしてもなるべく子どもたちが出来ることの幅を広げていくような関わりが出来たらと思っています。

行事には難しい面もあります。
行事を「やりたい」と思っている子がいる一方で、あまりしたくない消極的な子もいるのです。
子どもたちの中には小学校、中学校で様々な行事を「やらされた」という感覚を強く持っている子が少なくありません。一般の学校ではあらかじめ学校として決めたことをさせるのが当たり前だし、外部の人に披露するため、失敗しないように何度も何度も練習させられることもあります。そんな中では行事に対する「やらされた感」を抱き、消極的になってしまうのも仕方ないのかもしれません。
また、子どもたちの興味関心は多種多様ですので、「運動嫌いな子にとっての体育祭」のように行事の内容によってはまったく興味が持てない場合もあります。
さらに、そもそも人数の多いところが苦手で行事に参加することに苦痛を感じる子もいます。
このように行事に対する思いには子どもたちによってかなりの「温度差」があるのです。

それでも行事は興味のある子たちだけが集まるクラブなどとは違って全員に関わることなので、一人一人が参加するかどうかを含めて、行事とどのように関わるかを決めなければなりません。
そこで行事を企画する実行委員の子たちは、なるべく多くの子に参加してもらうために、参加しやすいような配慮をして自分たちの「思い」を伝えます。またそれを受けてスタッフから誘うケースもあります。
そしてそんな呼びかけや誘いを受けた子どもたちは「どうするのか」を自分で決めなければなりません。
「実行委員が頑張っているからちょっと面倒だけど参加してみようか」とか「参加はしないけど見には行ってみよう」とか「やっぱりきびしいのでやめておこう」とかそれぞれが迷った末に自分なりの結論を出していくことになります。
このように様々な行事への関わり方があって良いし、それぞれが出した結論は尊重されなければならないと思っています。

行事を巡って子どもたちの様々な思いが交錯し、時にはぶつかり合うこともあります。それぞれの場面で悩みながら自分で判断していくことは行事の中でこそ得られる貴重な経験だと思います。

そして参加した子どもたちには思いっきり楽しんでもらいたいものです。
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